人材不足・物価高・光熱費増大が重なり、介護事業所の経営環境は2026年も厳しい状況が続いています。帝国データバンクの調査によると、2025年の介護事業者の倒産件数は過去最多水準を更新しました。本記事で最新の経営動向と生き残り策を解説します。
2025〜2026年の介護事業所倒産動向
2025年の介護事業者倒産件数は150件を超え、過去最多水準となりました。倒産の主な原因は「人手不足による稼働率低下」「コスト増大(人件費・光熱費・食材費)」「介護報酬の伸び悩み」の3点が挙げられています。
| 倒産の主因 | 割合(推計) |
|---|---|
| 人手不足・採用困難 | 約35% |
| コスト増大(物価・光熱費) | 約28% |
| 利用者確保困難 | 約22% |
| 後継者不在・代表者高齢化 | 約15% |
サービス種別では訪問介護事業所の倒産が最も多く、次いでグループホーム・デイサービスとなっています。特に「ヘルパー不足で訪問件数を維持できない」訪問介護事業所の経営悪化が顕著です。
介護M&A・事業承継の増加
倒産の一方で、M&A(合併・買収)・事業承継による経営統合も増加しています。後継者不在の創業者高齢化事業所が第三者承継(M&A)を選ぶケースが増えており、2025年の介護M&A件数は過去最多となりました。
M&Aの主なパターン
- 大手介護グループによる地域中小事業所の買収
- 医療法人による介護事業所の取得(在宅医療との連携強化)
- 都市部事業者による地方展開(買収でエリア拡大)
- 事業承継(創業者引退→従業員・親族への継承)
介護M&Aを仲介する専門業者(M&Aアドバイザー)も増加しており、事業譲渡価格の算定や買い手とのマッチングを支援するサービスが充実してきました。
中小介護事業所が生き残るための戦略
1. 稼働率・利用者数の維持
サービスの稼働率が下がると固定費の回収が困難になります。ケアマネジャーへの営業強化・地域イベントへの参加・SNS・ホームページでの発信など、利用者確保の取り組みが重要です。
2. 加算算定の最大化
取れていない加算がないか、毎年度の改定後に見直すことが大切です。処遇改善加算(I)の算定・各種加算の取得漏れがないか、顧問の社会保険労務士や介護経営コンサルタントと確認しましょう。
3. ICTによるコスト削減
介護記録のICT化・シフト管理システム・送迎ルート最適化により、人件費・残業代を削減できます。初期投資はかかりますが、補助金を活用することで自己負担を抑えられます。
4. 多角化・新規事業
訪問介護に加えて居宅介護支援(ケアマネ)や通所介護を加えることで、収益を安定させる複合型経営が有効です。また、障害福祉サービスへの参入も収益多角化の手段として注目されています。
事業承継を考える事業所へ
後継者不在で将来に悩んでいる事業所は、早めに相談を始めることをお勧めします。中小企業庁の「事業承継・引継ぎ支援センター」(各都道府県設置)では、無料で相談を受け付けています。介護専門のM&A仲介業者への相談も有効な選択肢です。
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介護事業所の経営悪化が「気づかないうちに進む」理由
介護事業所の経営悪化は、稼働率の低下・職員離職率の上昇・加算取得漏れという3つのシグナルが重なることで静かに進行します。特に「加算の取り逃がし」は毎月の機会損失として積み重なるため、算定可能な加算を全て把握して取得しているかの定期確認が必要です。また、借入金の返済・設備修繕積立・退職金準備といった「見えない経費」を考慮した資金計画がないと、表面的な黒字が実質的な資金不足を隠すことがあります。
介護事業所のM&A・事業譲渡が増加する背景
2026年現在、介護事業所のM&Aは年間500件超のペースで増加しています。増加の背景は①代表者の高齢化による事業承継問題(後継者不在)、②物価・人件費上昇による中小事業所の体力低下、③大手グループによるエリア拡大戦略——の3つです。M&Aで事業を譲渡する場合のポイントは「職員の雇用継続」と「利用者サービスの連続性」の確保です。単に会社・株式を売るより、事業そのものの価値(ブランド・職員・利用者との関係)を評価してもらえる買い手を選ぶことが重要です。


