「ヒヤリハット報告書、どう書けばいいかわからない…」介護現場では多くのスタッフが報告書の書き方に悩んでいます。本記事ではヒヤリハット報告書の基本から、転倒・誤薬・徘徊・誤嚥の場面別例文までを詳しく解説します。テンプレートとNG例も紹介していますので、ぜひ現場で活用してください。
ヒヤリハットとは何か?なぜ記録するのか
「ヒヤリハット」とは、事故には至らなかったものの、「ヒヤッとした」「ハッとした」出来事のことです。1件の重大事故の背景には29件の軽微な事故、300件のヒヤリハットがあるとされる「ハインリッヒの法則」は、介護現場でも広く知られています。
ヒヤリハットを記録する目的は以下の通りです。
- 再発防止:同じ状況が起きないよう、環境や手順を改善する。
- 情報共有:スタッフ全員が同じ情報を持ち、注意喚起につなげる。
- 法的証拠:万が一の際の記録として活用できる。
- ケアの質向上:個別ケア計画の見直しに役立てる。
5W1Hで書くヒヤリハット報告書の基本
ヒヤリハット報告書は5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を意識して書くことが基本です。
| 要素 | 書くべき内容 | 例 |
|---|---|---|
| When(いつ) | 発生日時 | 2026年4月5日 14時30分頃 |
| Where(どこで) | 発生場所 | 1階トイレ前廊下 |
| Who(誰が) | 当事者(利用者名・スタッフ名) | Aさん(85歳・要介護3)、発見者:B職員 |
| What(何を) | 起きたこと | 歩行中に転倒しそうになった |
| Why(なぜ) | 原因・背景 | 床の水気に気づかず足を滑らせた |
| How(どのように) | 状況・対応 | 壁に手をついて転倒を免れた。バイタル確認、異常なし |
【例文①】転倒のヒヤリハット報告書
▼ 発生日時:2026年4月5日(日)14時30分
▼ 発生場所:1階トイレ前廊下
▼ 当事者:Aさん(85歳、女性、要介護3、歩行器使用)
▼ 発見・対応者:介護職員B
【状況】
14時30分頃、AさんがトイレからL字廊下に差し掛かったところ、清掃後に残っていた床の水分で足が滑り、転倒しそうになった。Bが側にいたため即座に腕を支え転倒を防いだ。
【原因】
・床面の水分が残っていた(清掃担当者が拭き取りを完了していなかった)
・廊下の照明が暗く、水分に気づきにくかった
・Aさんは認知機能低下があり、足元への注意が難しい状態だった
【対応・処置】
バイタルサイン測定(血圧112/72、脈拍76、体温36.4℃)。身体的外傷なし。ご家族・看護師への報告を実施。
【再発防止策】
・清掃後は「清掃完了・乾燥確認」のチェックリストを導入する
・廊下の照明を増設する(管理者に検討依頼)
・Aさんの移動時は必ず職員が付き添う
【例文②】誤薬のヒヤリハット報告書
▼ 発生日時:2026年4月8日(水)8時15分
▼ 発生場所:食堂
▼ 当事者:Cさん(78歳、男性、要介護2)
▼ 発見・対応者:介護職員D(服薬介助担当)
【状況】
朝食後の服薬介助時、Dが薬袋を手に取ったところ、CさんとEさんの薬袋が隣り合って置かれており、誤ってEさんの薬袋を渡しそうになった。Cさんが「この薬、見たことない」と発言したことで気づき、投薬前に誤りを発見した。
【原因】
・薬袋の管理場所が整理されておらず、利用者ごとの区分けが不明確
・朝の業務が混雑しており、確認が不十分だった
・薬袋の名前を声に出して確認する手順が徹底されていなかった
【再発防止策】
・薬袋は利用者ごとに色分けボックスに収納する
・服薬介助前に「利用者名を声に出して確認」を義務化
・ダブルチェック体制を導入する
【例文③】徘徊のヒヤリハット報告書
▼ 発生日時:2026年4月10日(金)21時45分
▼ 発生場所:2階廊下〜非常階段前
▼ 当事者:Fさん(80歳、女性、要介護4、認知症診断あり)
▼ 発見・対応者:夜勤介護職員G
【状況】
21時45分、夜間巡回中にFさんが非常階段前で立ちすくんでいる状況を発見。本人は「家に帰りたい」と訴えており、ドアを開けようとしていた。けが等はなかったが、一歩間違えば階段転倒の危険があった。
【原因】
・就寝後の見守り間隔が長かった(前回巡回から45分経過)
・Fさんは夜間の興奮状態が続いており、ケアプランの見直しが必要な状態だった
・非常階段ドアのアラームが設定されていなかった
【再発防止策】
・Fさんの夜間巡回間隔を20分以内に短縮
・担当看護師・ケアマネに報告し、ケアプラン見直しを依頼
・非常階段ドアにセンサーアラームを設置する
【例文④】誤嚥のヒヤリハット報告書
▼ 発生日時:2026年4月12日(日)12時10分
▼ 発生場所:食堂
▼ 当事者:Hさん(88歳、女性、要介護5、嚥下障害あり)
▼ 発見・対応者:介護職員I(食事介助担当)
【状況】
昼食時、食事介助中にHさんが急にむせ込み始めた。介助者Iがすぐにスプーンを置き、背部叩打法を実施。数秒後に咳が落ち着き、誤嚥には至らなかった。
【原因】
・Hさんの食事形態(軟食)が現在の嚥下機能に合っていない可能性
・食事のペースが速かった(Iの経験不足)
・食事中の姿勢(頸部前屈)が不十分だった
【再発防止策】
・言語聴覚士(ST)に嚥下評価を依頼する
・食事形態をとろみ付きに変更することを担当看護師に相談
・食事介助の研修(ペース・姿勢)を実施する
よくあるNG例:こんな書き方は避けよう
- NG:「転びそうになった」→ OK:「床の水分で足が滑り、壁に手をついて転倒を免れた」(具体的に)
- NG:「いつものこと」→ OK:「14時30分に発生」(日時を明確に)
- NG:「本人が悪い」→ OK:「環境・手順・体制に問題があった」(原因を客観的に)
- NG:「様子を見た」→ OK:「バイタル確認、看護師・家族に報告した」(具体的な対応を)
- NG:感情的な表現→ OK:客観的な事実の記述(事実ベースで)
提出後の活用法:ヒヤリハットを組織力向上につなげる
報告書を提出して終わりにしてはいけません。月次ミーティングでの共有・分析が重要です。
- 月次集計:件数・種類別(転倒・誤薬など)に集計し、傾向を把握する。
- 要因分析:「なぜ起きたか」を4M(Man・Machine・Media・Management)で分析する。
- 改善策の実施と確認:提案した再発防止策が実行されているか定期確認。
- 表彰制度:積極的に報告したスタッフを評価することで報告文化を醸成する。
関連記事:ケアプランの書き方【第1表〜第3表の記入例・文例付き】ケアマネ必見
まとめ
ヒヤリハット報告書は「責任追及のため」ではなく「チームで安全を守るため」のツールです。5W1Hを意識した具体的な記述と、提出後の組織的な活用が事故防止につながります。本記事の例文とテンプレートを参考に、ぜひ現場での安全文化を高めてください。



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