高齢者の「低栄養」は免疫低下・褥瘡発生・筋力低下・感染症リスク上昇など多くの健康問題を引き起こします。2024〜2026年度の介護報酬改定でも栄養管理の強化は主要テーマであり、管理栄養士の活用と加算算定が事業所の課題となっています。
高齢者の低栄養:なぜ起きるのか
- 食欲低下:味覚・嗅覚の衰え、薬の副作用、認知症による食事認識の低下
- 嚥下機能低下:食べにくい・むせる・誤嚥リスクでの食事制限
- 義歯の問題:合わない義歯・歯の喪失で食べられる物の種類が限られる
- 消化吸収能力の低下:腸の機能低下で同量食べても栄養が吸収されにくい
- 社会的要因:一人食事・孤立による食欲低下
栄養スクリーニング・アセスメントツール
| ツール名 | 特徴 | 使用場面 |
|---|---|---|
| MNA(Mini Nutritional Assessment) | 18項目・栄養状態を3段階評価 | 施設・在宅での初回アセスメント |
| MNA-SF(簡易版) | 6項目・5分以内で実施可能 | スクリーニング・定期確認 |
| MUST | BMI・体重減少・急性疾患を評価 | 病院・施設での栄養スクリーニング |
| SGAe(主観的包括的評価) | 問診・身体所見から評価 | 管理栄養士・医師が使用 |
[adsense]
栄養管理に関わる加算(2026年度)
| 加算名 | 対象 | 単位数・要件 |
|---|---|---|
| 栄養マネジメント強化加算 | 特養・老健など | 11単位/日・管理栄養士が個別対応 |
| 栄養アセスメント加算 | 通所介護 | 50単位/月・MNA等でスクリーニング・LIFE提出 |
| 栄養改善加算 | 通所介護 | 200単位/回・低栄養リスク者への3か月集中支援 |
| 経口維持加算Ⅰ・Ⅱ | 特養・老健 | 400・100単位/月・経口摂取支援の医師等協働 |
| 療養食加算 | 通所・訪問系 | 8単位/回・医師の指示による療養食の提供 |
実践的な低栄養改善の取り組み
①食事の形態・提供方法の工夫
嚥下機能に合わせたとろみ食・ミキサー食・ソフト食の提供は当然として、見た目・においの工夫(ソフト食の「見た目を普通食に近く」など)も食欲に大きく影響します。また、食事の姿勢・食具の工夫・食事時の関わり方も栄養摂取量に影響します。
②補助食品・栄養補助飲料の活用
食事だけでは摂取量が足りない利用者には、高カロリー・高タンパクの補助食品(栄養補助ゼリー・栄養強化飲料など)の活用が効果的です。ただし「食事の代わり」ではなく「食事プラスα」として位置づけることが重要です。
③定期的な体重測定と評価
月1回の体重測定を標準化し、前月比・前3か月比でのトレンドを確認します。1か月で1〜2kg以上の減少が見られた場合は早期介入のサインです。体重測定結果を介護記録に反映し、多職種で共有する仕組みを作ることが重要です。
まとめ
- 低栄養は介護状態の悪化・ADL低下・入院リスクにつながる最重要課題の一つ
- MNA-SFなどの簡易スクリーニングツールを月次で活用し、早期発見を目指す
- 栄養マネジメント強化加算・栄養改善加算は管理栄養士の活用で算定可能
- 食事形態・補助食品・体重モニタリングの三位一体で低栄養改善に取り組む
関連記事
介護施設の栄養管理で実地指導が確認するポイント
介護施設の栄養管理で実地指導が特に確認するのは①低栄養リスクのスクリーニング(入所時・定期的な体重・BMIの記録)、②栄養ケア計画の作成と多職種(看護師・ケアマネ・介護士)への周知、③食事摂取量の記録とケアプランへの反映——の3点です。体重が1ヶ月で3%以上減少している利用者を「要注意」として管理栄養士・看護師がすぐに関与できる仕組みがあるかどうかが、栄養加算算定の実態評価につながります。
栄養加算を取得するための体制整備と記録のポイント
栄養マネジメント強化加算(特養・老健等)を取得するには管理栄養士の常勤配置と、週3回以上の食事観察・記録が必要です。現場で実際に課題になるのは「管理栄養士が献立作成だけで精いっぱいで、個別の栄養ケアに時間が取れない」という状況です。介護士が食事摂取量の概算記録(全量・8割・半分等)を記録する運用を標準化することで、管理栄養士が問題のある利用者を素早く把握できるようになります。LIFEへの栄養関連データ入力との連動も、加算取得の要件として整備が必要です。


