毎年5月〜9月、介護施設では熱中症による救急搬送が急増します。高齢者は体温調節機能が低下しており、自覚症状が出にくいため、スタッフが早期に気づいて対応することが命を守ることに直結します。
なぜ高齢者は熱中症になりやすいのか
高齢者が熱中症になりやすい主な理由は3点です。体温調節機能の低下(汗腺の数が減り発汗量が少なくなる)、口渇感の鈍化(喉が渇いたと感じにくく水分補給が遅れる)、皮膚血流の変化(体表面から熱を逃がす機能の低下)が挙げられます。認知症の方は自ら水分を取ることが難しく、エアコン嫌いの方も多いため、スタッフによる積極的な管理が不可欠です。
重症度別の症状と対応
Ⅰ度(軽症)はめまい・立ちくらみ・大量発汗・こむら返りで、涼しい場所への移動と水分補給で対応します。Ⅱ度(中等症)は頭痛・吐き気・倦怠感・集中力低下が見られ、医療機関受診と経口補水液が必要です。Ⅲ度(重症)は意識障害・けいれん・体温40℃以上で、即119番と全身冷却を行います。
施設での予防対策チェックリスト
室温を28℃以下に保つ(WBGT指数を活用)。水分補給は2時間おきを目安に声かけ。入浴・食事・リハビリ後は特に注意する。薄着・通気性のよい服装を促す。夜間も熱帯夜はエアコンを継続使用する。朝のバイタルサインで体温・顔色を確認する。これらを日常的なルーティンとして取り入れることが重要です。
緊急対応フロー(スタッフ向け)
利用者の異常を発見したら、まず涼しい室内に移動させます。次に衣服を緩め、ネッククーラー・保冷剤で首・腋下・鼠径部を冷却します。意識があれば経口補水液を少量ずつ飲ませ、バイタルサイン(体温・脈拍・血圧・SpO₂)を計測・記録します。Ⅱ度以上の疑いがあれば医師・看護師に即報告し、Ⅲ度(意識障害あり)の場合は119番通報と同時に全身冷却を継続します。
2026年の熱中症対策で注目すべきポイント
2025年改訂の厚生労働省ガイドラインでは、WBGT(暑さ指数)の活用と熱中症対策責任者の選定が介護施設に求められています。屋外レクリエーション活動ではWBGTが28以上で警戒、31以上で運動中止を徹底してください。記録の義務化も進んでいるため、対応記録を施設として保管することも重要です。
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施設管理者はスタッフへの熱中症対応研修を年1回以上実施し、対応マニュアルを掲示しておくことが求められます。利用者ごとの水分摂取量の目標を個別計画に記載し、日常的にモニタリングする体制を整えることが、重大事故の防止につながります。
介護施設の熱中症対策で「記録を残す」ことの重要性
介護施設での熱中症対応は「発生させない予防」と「発生時の迅速対応」の両輪が必要です。特に記録の観点で重要なのは、熱中症疑いが発生した際の「時刻つきの対応記録」です。発見から応急処置・医療連絡・保護者(家族)への連絡までの経緯を記録に残しておくことで、後から施設の対応の適切さを説明できます。また、熱中症予防の日常記録(室温・水分摂取量の記録)が適切に行われていたことを示せると、施設の管理責任の証明になります。
夏季の実地指導で確認される熱中症関連の書類
夏季の実地指導では、熱中症対策に関して①年間の研修実施記録(熱中症対応研修)、②熱中症対応マニュアルの整備状況、③当該年度の熱中症疑い事例の記録——の3点が確認されます。「マニュアルはあるが職員が知らない」「研修を実施したが記録がない」というケースが指摘を受けやすいパターンです。このマニュアルを実地指導前に見直し、全職員への周知確認(サイン)を取っておくことで、夏季の実地指導をスムーズに乗り越えられます。


