介護施設のターミナルケアと緩和ケアの違い|現場で実践するための完全ガイド【2026年版】

介護知識・お役立ち記事

ターミナルケアと緩和ケア、現場で混同していませんか?

「ターミナルケア」と「緩和ケア」は、介護現場で混同して使われがちな言葉です。両者は重なる部分が多いものの、対象範囲・時期・目的が異なります。違いを正しく理解することで、利用者・ご家族により適切な支援が提供できます。

加えて、介護報酬の「看取り介護加算」「ターミナルケア加算」を算定するためには、書類整備とチームアプローチが不可欠です。本記事では、両者の違いから現場での実践方法、職員のメンタルケアまで解説します。


このページでわかること

  • ターミナルケアと緩和ケアの違い(一覧比較)
  • 介護施設での看取り介護加算と算定要件
  • 看取り期に行う具体的なケア
  • ご家族支援と職員のメンタルケア

ターミナルケアと緩和ケアの違い

| 項目 | ターミナルケア | 緩和ケア |

|——|————–|———|

| 対象 | 終末期(余命数か月以内)の方 | 治癒困難な疾患の方全般 |

| 開始時期 | 終末期と判定されてから | 診断時から並行して |

| 主な目的 | 安らかな最期を支える | 痛み・苦痛を緩和し QOL を保つ |

| 治療的処置 | 原則行わない | 必要に応じて行う |

| 場面 | 看取りの直前期 | 治療と並行〜終末期まで |

| 介護報酬 | 看取り介護加算・ターミナルケア加算 | 該当加算なし(医療側で対応) |

ポイントは時間軸。緩和ケアは診断時から開始できる広い概念で、ターミナルケアはその中の 「最期の数か月」に焦点を当てた段階 と理解すると整理しやすくなります。

緩和ケアとは:治癒困難な病に対する苦痛緩和

緩和ケア(Palliative Care)は、WHOにより「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者と家族のQOLを向上させるためのアプローチ」と定義されています。

特徴

  • がん・心不全・腎不全・認知症など対象は幅広い
  • 診断直後から始まる
  • 治療と並行することも可
  • 身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛すべてが対象

介護現場での実践例

  • 慢性疼痛のある利用者への姿勢工夫・温罨法
  • 認知症終末期の方の精神的不安への寄り添い
  • 呼吸困難への姿勢調整・室温調整
  • 家族の不安への傾聴

ターミナルケアとは:人生最期の数か月を支える

ターミナルケアは、余命が短いと判断された方への、安らかな最期を迎えるための支援です。終末期 ≒ 余命3〜6か月以内とされることが多いです。

特徴

  • 積極的な治療は原則行わない(本人・家族の意向次第)
  • 痛み・苦痛・不快感の緩和を最優先
  • 心理的・精神的・スピリチュアルな支援が重要
  • 家族との時間を支えることも重要な役割

介護施設での「看取り介護加算」

特養(介護老人福祉施設)等で算定できる 看取り介護加算 は、終末期にある利用者へのケアを評価する加算です。2024年改定で要件が見直されています。

算定要件(主なもの)

  • 看取り介護指針を施設で策定し、入所時に説明
  • 医師・看護師・介護職員・ケアマネ等による看取りに関する研修を実施
  • 本人・家族の意向を踏まえ、医師の医学的知見に基づき看取り介護計画を作成
  • 看取り介護計画について本人・家族に説明・同意
  • 看取り介護記録を作成し、看取り介護計画に基づいて実施
  • 日々の状態変化を多職種で記録・共有
  • 看取り後、職員に対する精神的負担軽減策(デスカンファレンス等)

加算単位(参考)

  • 死亡日:1,580単位
  • 死亡日前日・前々日:820単位
  • 死亡日4〜30日前:144単位
  • 死亡日31〜45日前:72単位

(※2026年改定後の参考単位。詳細は告示参照)

📌 関連記事: 特養での看取りケア|家族への説明・同意書

看取り期に行う具体的なケア

① 苦痛緩和

  • 姿勢の工夫:30度ギャッジアップで呼吸を楽に
  • 保清:清拭・口腔ケアで快適さを保つ
  • 環境整備:照明を落とす、室温22〜24度を保つ、静かな環境
  • 音楽・好きな映像:本人の好みを取り入れる

② 排泄ケア

終末期は排泄機能が低下します。おむつかぶれ・尿閉・便秘 が起きやすいので、観察と早期対応が重要。

③ 食事ケア

「食べたいときに、食べたいものを、食べられる分だけ」が原則。栄養補給のための無理強いは行わない。本人の好物を少量ずつ提供し、食べる喜びを最後まで保ちます。

④ コミュニケーション

意識が低下しても 聴覚は最後まで残る と言われます。

  • 本人に話しかけ続ける
  • 「いつもありがとうございます」「○○さん、家族の方が来られましたよ」と声をかける
  • 手を握る、優しく身体に触れる

ご家族支援:看取りは家族のケアも含む

① ACP(人生会議)の実施

ACP(Advance Care Planning)は、本人と家族が 「最期をどう迎えたいか」 を話し合うプロセスです。介護施設では入所時から段階的に行うのが理想。

話し合う内容例

  • 延命処置をするかしないか
  • 終末期の場所(施設で看取るか病院に搬送するか)
  • 経管栄養・胃ろうの希望
  • 看取り直前の家族の関わり方
  • 葬儀の段取り

② 家族の心理的負担への配慮

  • 看取りに立ち会いたい家族には連絡体制を整える
  • 「看取りに間に合わなかった」ことへの罪悪感を持つ家族には、施設側で寄り添う
  • 看取り後のグリーフケア(喪失への支援)を継続

職員のメンタルケア:看取りは介護職員にも負担

看取り介護に携わる職員は、悲しみ・無力感・燃え尽きを抱えます。施設として職員のメンタルケアを仕組み化することが大切。

デスカンファレンスの実施

看取り後、参加した職員が集まって振り返る会。

進行ポイント

  • 良かったケア・改善点を共有
  • 職員一人ひとりの感情を言葉にする
  • 「自分を責めない」「次に活かす」を合言葉に
  • 必要に応じて専門カウンセラーを招く

バーンアウト予防

  • 看取りに偏重しすぎないシフト調整
  • 経験の浅い職員には経験者がペアでサポート
  • 「悲しい」と言える職場文化づくり

まとめ:看取りはチームで支える総合ケア

  • 緩和ケア = 治癒困難な病全般、診断時から開始
  • ターミナルケア = 余命3〜6か月以内、安らかな最期を支える
  • 看取り介護加算の算定には書類整備とチーム連携が必須
  • ACPで本人・家族の意向を事前に確認
  • 職員のメンタルケアも重要な仕組み

看取り介護は、利用者・ご家族・職員それぞれにとってかけがえのない時間です。「いい看取りだった」と全員が感じられるケア を目指して、施設全体で取り組みを継続していきましょう。

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