高齢者は若年層よりも体内水分量が少なく、口渇感も弱いため、脱水・熱中症リスクが2倍以上高いとされます。介護施設では予防プロトコルの徹底が必須。本記事では予防・観察・初期対応まで実務目線で整理します。
高齢者の熱中症リスクが高い5つの理由
- 体内水分量が若年層より約10%少ない
- のどの渇きを感じにくい(口渇感の低下)
- 発汗機能の低下
- 降圧剤・利尿剤の服用による脱水傾向
- 認知症による水分摂取の判断困難
予防プロトコル(4本柱)
1. 環境管理
- 居室・共有部の温度28℃以下・湿度60%以下を維持
- カーテン・遮光ロールスクリーンで直射日光遮断
- サーキュレーター・扇風機の併用(高齢者は冷房を嫌う場合あり)
- 送迎車両の事前冷房・水分携帯
2. 水分摂取支援
- 1日1,500ml以上の摂取を目標(医師指示優先)
- 10時・15時など決まった時間の声かけ
- 水分摂取記録の徹底(食事と分けて)
- 嚥下機能に応じたとろみ調整
- 本人の好きな飲み物(麦茶・ジュース・スポーツドリンク)の活用
3. 観察項目
- 朝のバイタル(体温・血圧・脈拍)
- 口腔粘膜の乾燥
- 皮膚のツルゴール(張り)
- 尿量・尿色(濃い黄色は脱水サイン)
- 意識レベル・元気のなさ
4. 記録
- 水分摂取量を時間帯別に記録
- 排尿回数・量
- 体重変化(週次・脱水で減少)
- 気になる症状の記録
熱中症の症状(4段階)
| 段階 | 症状 | 対応 |
|---|---|---|
| Ⅰ度 | めまい・立ちくらみ・筋肉のけいれん | 涼しい場所・水分塩分補給 |
| Ⅱ度 | 頭痛・吐き気・倦怠感 | 医療連絡・経口補水液 |
| Ⅲ度 | 意識障害・けいれん・体温40℃以上 | 救急要請(119) |
| Ⅳ度 | 重篤な意識障害・多臓器障害 | 緊急搬送 |
初期対応フロー
- 涼しい場所へ移動:冷房の効いた部屋・日陰
- 衣服を緩める:襟・帯・靴下
- 身体冷却:首・脇の下・足の付け根を氷嚢で冷やす
- 水分補給:意識清明なら経口補水液(少量ずつ)
- バイタル測定:体温・血圧・脈拍・SpO2
- 医療連絡:嘱託医・看護師・必要に応じ救急
- 記録:時刻・症状・対応を時系列で
救急要請の判断基準
- 意識がもうろうとしている・呼びかけに反応が鈍い
- 体温40℃以上
- けいれんが起きている
- 水分摂取ができない(飲み込めない・嘔吐)
- 体の冷却を15分試しても改善しない
ハイリスク者の特定
- 85歳以上の超高齢者
- 認知症がある
- 糖尿病・腎臓病など慢性疾患
- 利尿剤・降圧剤を服用中
- 過去に熱中症の既往あり
- 1人暮らし・室内エアコンを嫌がる
家族・利用者向け啓発
- のどが渇く前に水分を摂る習慣
- エアコン使用への抵抗感を解消する説明
- 夕涼みの落とし穴(夜間でも危険)
- 救急要請をためらわないことの重要性
関連記事
高齢者熱中症予防の基本、熱中症対応記録テンプレートもご活用ください。
まとめ
高齢者の熱中症対策は「環境管理・水分摂取・観察・記録」の4本柱を年間ルーチン化することが基本。6月〜9月は特に注意し、ハイリスク者を個別管理しましょう。


